地図の豆知識
2013年04月09日
国土地理院が全国約1200点以上設置している電子基準点は、我が国の国土の位置を決定する測量の基準点として広く利用されています。 外観は高さ5mのステンレス製の太い柱で、概ね20〜30km間隔で学校や公共施設の敷地に設置されており、目撃された方も多いでしょう。
電子基準点のいろいろ. 国土地理院のWebサイトから引用.
最上部の白い半球状のドームの中に測位衛星からの信号電波を受信するアンテナがあり、胴体内部に受信器と通信機器があります。基礎部には電子基準点付属標と呼ばれる金属標が埋設されており、三角点と同様な利用ができます。さらに、この付属標に近傍の水準点から直接水準測量を行って二等水準点相当の高精度な標高値を与え、水準点としても利用出来るものもあります。
この4月1日、国土地理院から「全国の電子基準点で観測した(引用者補完:GPSに加えて)準天頂衛星(日本)及びグロナス(ロシア)のデータ提供を開始します。昨年7月から東北地方などで先行提供を開始しましたが(全国の15%をカバー)、平成25年4月1日に東日本のデータ提供を開始し(同40%)、5月10日を目途に全国のデータ提供を行う予定です。」という発表がありました。
〈 → 国土地理院の発表資料〉
GPSはGlobal Positioning Systemの略で、上空約2万km の軌道を周回する測位衛星の電波信号を利用する測位システムのひとつであることは、よく知られています。アメリカ合衆国の国防省が運用し、測位信号は全世界に無償で公開されています。民生向きに使える衛星測位システムが長らくGPSだけだったので、これが一般名詞のように使われてきましたが、近年はGNSSという用語が使われるようになってきました。
GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemの略で、いろいろな衛星測位システムの総称です。今世紀に入ってから、ロシアのГЛОНАСС(GLONASS)の再構築が進み、日本の準天頂衛星(QZSS)やEUのGalileoなど各国の衛星測位システムの構築も始まり、測量機器も各システムに汎用できるものが主流になってきました。
衛星測位では、観測点から最低限4個の測位衛星の電波を同時に受信できる(=衛星が同時に見える)ことが必要です。衛星の軌道配列はそれを配慮していますが、実際は樹木や建物で遮蔽されることもあります。多くの衛星が共通に利用出来れば、同時に見える衛星も増え、測位精度の全般的な改善につながります。国毎に独自に使うよりも、技術情報を開示して共用する方がお互いに得をするという、国際協力の好循環のようなお話しです。
電子基準点と標石のみの三角点との大きな違いは、観測装置が基準点に組み込まれていることで、自身の位置を常時連続的に観測していることです。このことは、地殻変動が活発な日本列島にあってきわめて有用です。同様の連続観測施設は、外国にもありますが、日本列島ほど高密度に展開されている例は殆どありません。
電子基準点網の整備は、測量の基準としてだけではなく、地殻変動の連続的な監視が大きな目的でした。これによって火山噴火の推移の予測精度が高まり、北海道の有珠山では2000年噴火直前の住民避難に貢献しました。また、測量の基準としても、地殻変動の影響を補正する情報の提供が可能になっています。
〈 → 国土地理院「平成25年3月の地殻変動について」〉
〈 → 国土地理院セミ・ダイナミック補正〉
電子基準点の地図記号は、三角点の記号と電波塔の記号とを組み合わせた図柄でその機能を表しています。なお、地形図や地勢図で場所を確かめて見学するときは、敷地の管理者の許可を得てください。国土地理院地図と測量の科学館の傍にある「つくば3」は最も気軽に見学できる現役の電子基準点です。
2012年11月28日
〈⇒ 地球楕円体について国土地理院による解説〉
地球は実際どんな形をしているのでしょうか。「地球はまるい」ことは今では誰でも知っています。そもそも「地球」という名もその形が丸いからつけられたものです。しかし実際には山も海もあって、正しい球形とはいえません。そこでこの「丸さ」がどの程度なのかを考えてみましょう。
山で一番高いのはエベレスト山で、海面から測って8,848mです。また、海底で一番深いところは西太平洋のマリアナ海溝で、海面下11,034mです。そうすると最高から最低までの差は19,882m、約20kmです。20kmというと大きいようですが、陸上の道だったら、その気になれば1日で歩ける距離です。地球の半径6,370kmにくらべ300分の1以下にすぎません。地球上の山や海による凸凹の差は、全部この範囲内に入ってしまいます。
次に、地球の「つぶれ」の程度を考えてみましょう。地球の中心から北極(または南極)まで測った半径を極半径、赤道まで測った半径を赤道半径といいます。地球は少しつぶれていて、極半径は赤道半径よりも少し短いのです。その違いは21,385m、すなわち約20kmで地球半径の約300分の1です。
つまり、地球は山や海による凸凹も、南北方向のつぶれ(扁平度)も、大体20kmぐらいの程度、地球半径の300分の1に収まる程度なのです。
さて、太さが0.2mmの線でソフトボールの球と同じ大きさの直径9.7cmの円を書いてみましょう。もし、地球をこの大きさに縮めたとすると、山や海によるでこぼこも南北方向のつぶれも0.2mmの線の太さの中に入ってしまいます。地球は思いの他、丸いものなのですね。 (script by jmchako)
2012年09月24日
前回は、伊能忠敬が振り子時計を使って経度の測定を試みたお話しを書きました。その続きです。
上の図は、日本列島上の3地点で振動回数を計った様子を模式化して描いたものです(日本国際地図学会および伊能忠敬研究会監修)。
この3地点の振動回数を比べるとその回数は異なった結果となります。この振動回数の差が経度差ということになります。1日の振動数も現地で測られていますが約59,000回あまりの記録があり、この間に地球が一回転しますので振り子の振動数1回当たりの角度が得られ、観測地点の経度差を角度で表すことができます。
以上がその原理で、実際には忠敬の測量班出張期間中に日食や月食は13回起こりましたが、現地と大阪・京都の3地点の天候が同時に可能だったのがわずか2回しかありませんでした。このため伊能図の作成には役立てられなかったようです。
しかしながら、この方法で多年にわたり観測した結果、江戸・大阪・京都間の経度差だけは成果があるため、忠敬はこの観測値に基づいて、出来上がった地図上に経度線を引いたと推察されます。
たとえば、1809(文化6)年「伊能忠敬幕府上呈の日本図」では、経度線は「京師(京都)を中度とし東西に分かつ」とあり、京都より東西に各1度ずつ経線が描かれ、「東四度」が東京付近、「西五度」が鹿児島付近に引かれています。
日本沿海輿地図(伊能小図)「東日本」(東京国立博物館蔵)
本格的な経度測量によってグローバルな経度が測量されるのは、クロノメータ(ゼンマイ時計)を用いた明治の近代測量開始まで待たなければなりませんでした。
(script by jmchako)
2012年09月21日
伊能忠敬が全国の測量に持ち歩いた測量器具の中に「垂揺球儀(すいようきゅうぎ)」という振り子時計があります。現在、伊能忠敬記念館に展示されています。これは経度の測定に用いるため、1日の時間や日食、月食の始まりから終わりまでの時間などを測ったものです。さて、どのような原理で振り子時計を使って経度を得たものなのでしょうか考えてみましょう。
地球は1日かけて一回転する極めて正確な時計です。この地球上で我々の生活は太陽の動きに従って営まれています。太陽が我々のいる真南の方向を通過(南中)した瞬間、これを地方太陽時における正午と呼んでいます。日本のどこに住んでいるかによって太陽が真上に来る瞬間は異なりますので、標準時でみれば、それぞれその時刻は微妙に違ってきます。
忠敬は旅先でこの南中時刻から日食や月食などの天文現象が生じるまで、時計の振り子が何回振動したかを測りました。これは日本のどこにおいてもこの天文現象の瞬間を見ることができるからで、この現象を利用して大阪や京都でも予め予報に基づいて連絡をとりあい、この日を待って同じ測定を行いました。
さて、伊能忠敬は、振り子時計で経度をどのくらい測ることができたのでしょうか。次回に続きます。
(script by jmchako)
2010年01月22日
地形図の愛好者、とくに山登りをする人にはお馴染みの記号です。図式では標高点、英語では“spot heigt”または“spot elevation”と言います。原則的には、自然地形の標高を示すもので、山頂のほか峠、谷の出合いの地点、広い谷底、尾根の傾斜変換点、道路の分岐点など地形を表現するために必要な地点の標高を表したものです。
標高点には、標石のあるもの(標高値が0.1m単位)と標石のないもの(1m単位)があります。前者は、4等三角点や公共測量の基準点で、後者は、現地の測定点測量や室内の空中三角測量で決めたものですが、多くは空中写真を図化する際に読み取った数値を標高点としています。
一般には、昔の5万分1地形図以来の“独立標高点”または省略して“独標”の呼び名で知られていますが、地点名として記載されたものもあります。2万5千分1地形図「穂高岳」の“西穂独標(2,701m)”や同「槍ケ岳」の北鎌尾根上の“独標(2,899m)”は登山愛好家には広く知られています。また、日本一高い標高点には富士山頂の火口底の3,535m、低い方では東京都、大阪府、名古屋市西方、秋田県の大潟村(八郎潟干拓地)などの0m地帯にマイナスの標高点があります。
2009年12月18日
地形図に表示される対象物はすべて記号化されます。 今回は、表示する対象が実形より省略した形で表現される場合について述べます。
一般に表示対象を誇張(修飾)したり、省略(簡略)したりすることを地図の作製用語では、総描(一般化)と呼んでいます。では、総描はどのようにしておこなわれるのでしょうか。これにも、いろいろの約束事があり、次の原則によって行われます。
1. 実際(現地)の形状と相似性を保つこと。
2. 現状の特徴を失わないこと。
3. 必要に応じて、形状を誇張しても、現況を理解しやすく表現すること。
4. 極端な総描を行ったことにより、現況との相似性を失わないこと。
例えば、日光の 「いろは坂」 のヘアピンカープをすべて2万5千分1地形図に描き表すことはできません。どうしても省略されます。 この場合、カーブの始まる点と終わる点を正確に図上にポイントし、この間は相似性を保ちつつ、現場の景観が理解できるように編集されます。また、都市部の市街地道路をすべて描き表すこともできません。事実、市街地内の道路 (街路) は道路幅が1.5m以上であれば、 図式上では、すべて表示の対象となりますが、 道路幅が0.4mm (実幅10m) 未満の道路はすべて0.4mmにして表示することが図式では規定されています。 これで分かるように、どうしても省略される道路があります。 この場合、市街地の道路網の景観が損なわれないように特徴を捉え、市街地内の道路は取捨選択されていること、道路網の景観を表していることをご理解ください。
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2009年12月11日
地形図に採択された対象物の移動(転位)はどのように行われるのでしょうか。これにも、いろいろな約束ごとがあります。 対象物の移動は、次の原則に基づいて行われます。
(1)関連する他の対象物との相対的な位置関係は現状に対応させる。
(2)基準点 (水準点は除く)および河川、海岸線、湖岸線等の自然物は移動しない。
(3)有形線の対象物(実在する道路や河川など)と無形線の対象物(実存しない等高線や境界線など)が近接する場合は、無形線の対象物を移動する。
(4)実在する自然物と人工物が近接する場合は、 人工物を移動させる。
(5)連続する人工物(道路や鉄道)とその他の人工物(建物など)が近接する場合は、その他の人工物を移動させる。
以上の原則に従って、表示対象物は移動されます。 例えば、三角点と河川は真位置に表示して、 人工対象物 ( 道路、鉄道、堤防、家屋など)は移動します。 その累積量を地形部分に配分して、対象物の相対関係は現状に対応させています。
2009年11月27日
前回は、地形図がいろいろな制約や約束ごとによって作られていることについて述べましたが、その背景には、地図を「見やすく」、「使いやすく」という作り手の方針が基本にあります。
私たちが地表面の景観を平面的に観察する手段として、(1)上空から直接見る、(2)空中写真で見る、(3)地図で見る、などがあります。 (1) と(2) は、直接的に対象物を観察しますが、(3)は地表面を限られた地上で間接的に観察します。 特に、地図は、縮尺比で表示されることから、どうしても「表現されるもの」と「表現されないもの」に分けられます。 これが地図表現上の制約(取捨選択)になります。
では、地形図の表示対象物は、どのような約束ごとで取捨選択されるのでしょうか ? それは、次の原則で行われます。
1. 表示対象物は、 所定の縮尺に応じて適切に選択が行われ、正確に表示されます。
2. 地域的に特徴のある対象物は、地図作製目的を考慮して選別します。
3. 表示対象物で、永続性の高いものは省略しません。
4. 表示対象物が他の表示対象物に比べて相対的に重要度が低くても、局地的に極めて必要度の高いものは省略しません(山小屋など)。
以上の原則に従って採択された対象物は、記号化されて描画されますが、一般に実際より誇張 (拡大) して表現されています。 例えば、空中写真で判読が困難な三角点や水準点が、地図上で読み取りやすいのは誇張化された結果です。 この誇張の度合いは、縮尺が小さいほど大きくなります。このため、表示対象物の全てを正しい位置に表示することはできません。 次回では、表示対象物の転位 (移動) の基本について記述します。
2009年11月20日
地図はいろいろな約束ごと、すなわち制約 (図式) によって作られています。国土地理院の地形図は、人や車など、動いているものを表現することはできません。あくまで上空から地表面を垂直に眺めた景観を、正射影した状態で図化表現したものです。
地図は、地図の作製目的や作製する範囲や紙の大きさによって縮尺が決まり、 縮尺によって表現されるものが制約されます。 国土地理院の地形図のように、全国が同一の基準で作られる地図は、地域によって偏った内容にならないよう、細かく図式化 されています。 地形図に表示される基礎的事項は、次の通りです。
(1) 図式の原則は、測量の時点において現存するもので、永続性があるものはすべて表示の対象になります。
(2) 地形図に描き表される対象物は、すべて記号化して描画されますが、対象物はすべて表現されるかというと、そうではありません。地図は「見やすく」、「使いやすく」 するために編集されます。 すなわち、対象物によっては 「省略したり」、 「誇張したり」、「移動したり」して、地形図は作られていますが、その方法は図式によって決められています。
(3) 地名や河川、道路、鉄道などは、原則として現地で使用される名称を採用し、詳細は図式によって決められています。
次回は、地形図の表示対象物は、どのように描画されるか、その概要について記述します。
2009年11月06日
国土地理院の2万5千分1の地形図は、国土の姿が同一の基準で作られていますが、 その基準についてご存知でしょうか? 地形図は決められた地球の形をもとに、決められた投影法で経緯線を描き、位置と高さの基準点(三角点と水準点)を平面上にプロットして地図の骨組みが作られます。
(1)地球が 「球体」であることは、皆さんもご存知のことですが、しかし、完全な 「球体」 ではありません。地軸を中心に僅かに膨らんだ扁平な球体(楕円体) です。 地球の形を表す原数値は、ベッセル数値で下図に示すとおりです。また、世界各国がそれぞれの地球楕円体を使用し、それに基づく測量成果や地図が作製されると整合性がとれず不便なので、2002年4月1日から我が国では、測量法を改正しGRS80の値が使われることになりました。この形状は、「GRS80地球楕円体」呼ばれているものです。
◆ベッセルの地球楕円体
長半径(a) 6,377,397.15m
扁平率((a-b)/a) 1/ 299.152813
◆GRS80地球楕円体(新測量法同政令による)
長半径(a) 6,378,137m
扁平率((a-b)/a) 1/ 298.257222101
(2)投影法は、UTM (ユニバーサル横メルカトル図法)図法によって、地形図の1枚1枚の大きさが計算され、区画されています。その形は、厳密には台形ではなく、不等辺四辺形です。
(3)地球上の位置と高さを示す基準点は、日本経緯度原点より測定した三角点と、高さは日本水準原点より測定した水準点です。 ただし、北海道、本州、四国、九州を除く離島の高さは、各島の周辺海域の平均海面を基準面にして測定されています。
●日本経緯度原点: 東京都港区麻布台2-18-1
詳しくはこちら
●日本水準原点: 東京都千代田区永田町1-1-2
詳しくはこちら
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2009年10月30日
地形図は、「見るもの」でなく「読むもの」と言われますが、とはいっても一見して無味乾燥な地形図は、特定の目的をもった観光ガイドマップや繁華街のショッピング地図のようには親しめないと聞きます。地形図を読むポイントとは何でしょう。
(1)地形図に親しむ
地形図には、実に多くの情報が描かれて詰まっています。地図に親しむ習慣を身につけて、地図から知識の輪を広げてはどうでしょうか。 例えば、テレビや新聞にでてくる町の名前は、まず地図帳で知ることができます。さらに、一歩進めてそこがどんな自然環境にあるのか、 土地利用は、などを知りたいときに、地形図は最適です。
(2)地形図を読む近道は、図式(地形図の凡例の記号)を理解する
地形図の情報は(ほとんど)記号化されています。まず地図記号を理解することが、 地形図を読みこなすための第一歩になります。当センターの「地形図の手引き(五訂版)」、「地形図図式画報(第4版)」、月刊「地図中心/通巻400号(特集地図記号400)」を参考書にどうぞ。
地形図図式画報(第4版) 「地図中心」 通巻400号
(3)旅行に出かける前には、必ず目的地の地図を眺め、現地を想像する
自分流に地形や植生、地名、集落の配置等から景色をイメージしてみてください。
(4)事前にイメージした景観を確認する
地形図に表現されたことと実際を対比して、事前に想像した景観はどうであったかなどを確かめることは、 読図名人への近道です。
(5)最初はなるべく縮尺の大きい地図(1万分1地形図など)から始める
縮尺の大きい地図の方が、 実際の場所と地形図が一致しやすいと思います。慣れてきたら、徐々に縮尺の小さな地図に進むことをおすすめします。具体的には、街中の探検には1万分1地形図、登山 ・ハイキングや自然観察には2万5千分1〜 5万分1地形図が適当と考えられます。
2009年10月15日
以前はよく 小 ・ 中学校の教室の壁に貼られていた長方形の世界地図は、 メルカトル図法により作製された地図です。この地図は、 世界の形を知るうえで最も一般的なものですが、実は距離と面積の歪みは大きく、特に北極や南極に近づくほど歪みが大きくなります。しかし、よい点は角度が正確であるということです。メルカトル図法は円筒図法の一つで、主に海図 (航海図) に使われています。図上の2点間 (出発点と到着点)を結ぶ直線と経線 (子午線) を横切る交点において、図上の角度と同一の角を測って進めば、目的地に到達できるという優れた特徴があります。
ところで、国土地理院の地形図と地勢図は、実は円筒図法です。 ただし、メルカトル図法とは円筒の向きが逆で 「ユニバーサル横メルカトル (UTM) 図法」 と呼ばれているものです。 これは、地球全体を経度6度ごとの座標帯に分割して、子午線を基準に円筒を横向きにして座標帯ごとに投影するため、誤差は少なく、 座標帯内では地図を隙間なくつなぎ合わせることができます。このUTM図法は、第2次大戦以降、大・中縮尺の地図に適した図法として世界的に使われています。
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2009年10月01日
健康増進にウオークが見直されるようになり、休日には家族連れで野山を歩く人、 あるいは夕食後にチョット近所の友人と誘い合わせて夜の街を歩く人など見かけます。測量界でも、江戸時代の測量家、 伊能忠敬の測量の旅をヒントに日本全国を一周するウオークのイベントに積極的に取り組みました。毎年6月に開催される測量の日には、歩測による距離当てクイズも行われています。
距離を測る単位として最初に用いられたのは、おそらく人間の歩幅であったと思われます。 測量会社に入った人は、測量に足を踏み入れた際、 最初の訓練でこの 「歩測」 による距離当てクイズを経験します。最初はなかなか正確な距離は出せないものです。「目測 (もくそく) は6分の1、歩測は30分の1の程度の誤差」とのことで、一般的に100mに対する誤差は、目測で約17m、歩測では約3mと言われています。 さらに、当時は100mをキッチリ66複歩で到達する訓練がありました。1複歩が1.5mとなるよう歩幅を一定にしなければなりませんでした。 この複歩は、古く中国で二足(ふたあし)、すなわち1複歩を一歩と定めたのが起源だそうです。私達も訓練するごとに100mを 1m位の誤差で正確に測れるようになり、その後の現場の測量では非常に役に立ちました。 例えば水準測量では、標尺の中央に据えたレベルから前視標尺も後視標尺も同じ距離になるよう標尺を据える必要があり、歩測の精度が水準測量の精度に影響することになります。 ベテランになるとカーブした道路でも標尺持ちは、正確に1m以内にその位置に据えることができるのです。これも測量技術の腕(足?)の内と言えるかも知れません。距離が等しくないと何度も標尺を据え直すことになります。
江戸時代の測量家伊能忠敬は、1800 年の蝦夷地測量の際、江戸と野辺地 の奥州街道を歩測で測量したといわれています。 因みに忠敬は、全国測量前に毎日通っていた暦局から千住宿まで歩測をしており 、「一町に一五八歩」 という記述があります。これを計算すると 「1町=10909.1cm、10909.1cm÷158歩=69.04cm」 となり、伊能忠敬の一歩は69cmであったと思われます。 1複歩にすると138cmで、我々が訓練した150cmよりやや短い物差しであったようです。
私たちが生活する地球が球体であることは、周知のとおりですが、私たちの目にする地図は、平らな紙面に印刷したものであり、時には T VやPCの画面であったりします。丸い地球の表面を平らな紙面に表した地図には、どうしても 「歪み」 が伴います。
球面を平面に置き換える時に出る歪みには、距離、方位、面積、角度などがあります。 今までに考案された図法では、これらの歪みのうち、 限定された条件下で 二つ同時に解消できる場合がありますが、 三つ以上の歪みを同時に解消することはできません。
数ある地図投影の基本型は、次の三つに分類できます。その第1は、地球を平面に投影する方位図法、第2に地球を筒状の円筒面に投影する円筒図法、第3に地球を底辺の丸い円錐面に投影する円錐図法があり、 いずれも地球を平面に延ばしたものです。(図あり)
しかし、先ほどの 「歪み」はどうしても地図には存在します。地図の利用目的によっては、地図の性質 (図法)を知ることが大切です。この歪みに比較的無関係なのは地球儀です。地球儀は、 地球と変わらぬ 「球」 の特性をうまく生かしているからです。
地図投影法
円錐図法
円筒図法
方位図法
図をクリックすると拡大します。
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2009年09月17日
方位は、私たちの生活に深く関わっています。 例えば、不動産屋で住宅を探すとき、理想的には「東南の角地、日当たり良好」の条件で探します。不動産屋では、地図で一応説明してくれますが、自分でも現場で方位のほか生活諸条件を下見するでしょう。
磁石がなくても、家の南側と北側では日当たり、 明るさ、地面の湿り具合が違うので南を知ることができますが、腕時計を使って概略の南を知ることもできます。
地球は1日24時間で 1 回転するので、1時間あたりにすると360度を24時間で割って15度、そして時計の文字盤は12目盛だから、 短針は 1時間に30度回転します。 太陽が真南(南中)に来たときが正午になります。 これを応用して、南を知ることができます。
いま、午前8時だとします。地面の影に沿って時計の短針を太陽の方向に合わせます。太陽が真南 (南中) に来たときが正午になります。 正午まで 4時間ですから、太陽は南中までに15度の4倍で60度動きます。ということは、時計の文字盤の60度、つまり2時間進んだところの10時の方角が南になります。すなわち、 「短針の位置から正午までの半分の指す方向が南」と覚えれば簡単です。
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2009年09月04日
地図の上方は、なぜ、「北」になるのか。と質問を受けたことがありますが、別に決まりはありません。国土地理院をはじめ国内・外の政府機関が発行する地図の大半は、地図の上方を「北」にしています。しかし、南半球に位置するオーストラリアでは、地図の上方を「南」にした地図もあります。
では、どうして地図の上方を「北」にしたかについては、(1)地図を北極星の方位に対比するのに便利だから、(2)磁石で方位を求めるとき、磁石の針はいつも「北」を指し、地図にあわせるのに都合がよいから等いろいろな説があります。
ところで、北と南を基準にして示す方向を「方位」と呼んでいます。方位には、真方位と磁針方位があり、地図の指す方向は「真方位」、磁石の針の指す方向が「磁針方位」です。真方位と磁針方位には若干のズレがあります。現在は日本では、磁石の針は真方位より西に偏った方向を指します。この真方位と磁針方位とのズレの量は、地域によって、日時を追って変化します。札幌では磁針方位は西偏約9度20分、東京では西偏約6度50分、宮古島では西偏約3度50分です。地形図の図郭外に磁針方位が書かれていますので、地図上で磁石を用いて方位を求める場合には、参考にしてください。
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2009年08月20日
人の歩く速度は、1分間に約70mが一般的な速さで、時速4kmが基準になっています。では、人が平均時速4km歩くとしたら、1/25,000の地形図上では1時間に何cm 進めるでしょうか? 答えは、16cmです。1/50,000地形図なら8cm となります。
ところで、昨今の車社会では時速60km くらいがあたり前の移動速度で、時速4km で歩く速度では何か時代から取り残されるような気がしますが、どうでしょうか。確かに速度が上がれば便利ですが、細かく観察する機会は少なくなります。車では珍しいものを見つけてもすぐ遠ざかり、結局は駐車場周辺の景色に限られてしまいます。とは言っても車窓から眺める景色には感激もしますが、ゆっくりと観察となると徒歩に限ります。
移動速度は地図の縮尺に関係します。ドライブには1/100,000〜1/200,000の縮尺で、自転車なら1/50,000〜1/25,000地形図が適当だと思います。登山・ハイキングや自然観察には、1/25,000地形図が主流です。街の散策には1/10,000地形図が最適で、また1軒ずつの家を探すのは、縮尺の大きい市街図か住宅地図を使うのがよいと思います。 地図センターHOMEへ
2009年08月06日
地図は、実際の場所をある限られた大きさの紙面の中に描き表すので、当然のことながら実際の大きさより小さくなります。この小ささを「縮尺」といいます。少し専門的に言えば縮尺とは、2 地点間の実際の水平距離と地図上に縮小して表示された長さ (距離) の比です。
地図にはスケール尺とともに 「1 / 50,000」 とか 「1 : 50,000」 等と表示されているのがそれで、実際の地上の長さを分母に、地図上の長さを分子 (一般には 1 にする) とする分数で表されます。
例えば、実際の地上の長さ1,000m は 1/ 50,000 では何cmになるでしょうか? 1,000÷50,000=0.02mすなわち2cmで表されることになります。逆から見れば、地図上の2地点間の長さに縮尺の分母を乗ずれば、実際の距離が地図上から求められます。(表1参照)
このことから、縮尺の分母の値が小さいほど、実際の距離に近い地図になり、これを大縮尺 (例えば 1/500、 1/2,500) の地図といいます。小縮尺(例えば1/200,000、1/1,000,000) の地図になれば地名や道路、土地利用等はより省略されます。地図を使う際は、用途にあった縮尺の地図を選ぶことが大切です。
〈表1〉縮尺と距離の早見表
縮 尺 | 地図上の1cm | 実際の1km |
1/10,000 | 100m | 10cm |
1/25,000 | 250m | 4cm |
1/50,000 | 500m | 2cm |
1/100,000 | 1,000m | 1cm |
1/200,000 | 2,000m | 5mm |