2014年09月10日

高校の地理教育 だれもが学ぶ基礎科目に

7月19日の朝日新聞朝刊の第13面の『私の視点』に、題名のタイトルで“地理教育が今危機的な状況に置かれている”として、鈴木康弘名古屋大学教授(自然地理学)のご意見が載っていました。

要約すると「高校の「地理歴史科」は世界史、日本史、地理の3科目からなっているが、1989年に世界史が必修となり、日本史と地理は選択科目となったため、地理を学ぶ生徒の割合が減り、現在は半数程度にとどまっている。今年1月、安倍首相が国会答弁で日本史の必修を検討していくと表明したので、これが実現すると地理を学ぶ機会を失いかねない。地理は世界各地を観察し、人々の暮らしを知り、人と自然の関係や地域間のつながりを考える科目であり、地球環境や地図情報、気候変動や活断層研究など、現代的な課題も地理学者が支えている。「大局的な地球観や世界観」をつかみ、世界を俯瞰的に眺める能力は、リーダの資質としても欠かせない。そこで、日本学術会議が提唱しているように、日本史と世界史を統合した「歴史基礎」と、グローバル化に対応した「地理基礎」の実現を図るべきだ」ということです。

 鈴木先生が初めて国土地理院の業務のご指導をなされたのは、阪神淡路大震災直後、国土地理院が新しく始めた『都市圏活断層図』の作成からでした。当時から活断層研究の第一人者でした。まさに現代的な課題を地理学者が支えています。

 昨年8月に世界の地理学者が京都に集まって開かれた『京都国際地理学会議』のテーマは「地球の将来のための伝統智と近代知」でした。1,200年以上の歴史があり、地球温暖化の京都議定書が採択された京都で、世界の地理学者が議論を交わし、成功裏に終了しました。国際会議と同時に行われた世界の高校生が参加して地理的知能を競技する『国際地理オリンピック』では、残念ながら銀メダル銅メダル各一人と金メダル11名の中に誰も入りませんでした。底辺を広げていくことの重要性を改めて感じさせる結果だったと思います。

 (一財)日本地図センターでは、少しでもそれに貢献すべく、今年も“夏休み地図教室”等を行っています。おかげさまで、今年18回行われたほとんどの回が定員35組に達し、盛況に行われました。来年も続けていくこととしています。(M)



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