2014年06月11日

記憶と位置情報

 毎朝、「JR渋谷駅」まで電車を乗り継ぎ、さらに渋谷から田園都市線の「池尻大橋駅」近くの職場まで、約20分余りを徒歩で通っています。この徒歩での往復40分の運動は、貴重な時間であり、特に、都会の街路樹の新緑を眺めながらの往路は一日のはじまりとして、私はとても気に入った一時で急がずユックリと足を運ぶ毎日です。

 最近、ラジオで気に入った番組があり、これを録音し、イアホンを耳に、同じものを何度も聞くことがあります。すると今、耳にするこの話が、昨日は、これから200m程ずっと先の交差点で聞いたことを鮮明に思い出します。つまり、今日と昨日の聴いた同じラジオの話題が、違う場所で聴いていたことを思い出して、昨日との位置の違いを大変よく覚えていたことに不思議さを感じていました。

 そんなことをボンヤリ考えていた矢先、記憶と位置情報をテーマにしたNHKのテレビの番組がありました。これは、記憶と位置情報は、大変深い関係があるという番組で、地図や測量を生業としている当方としては、見逃せない番組でした。



その秘密は「場所細胞」の特性に起因しているということです。

ラットくんが登場します。ラットくんが空間の中を動き回るとき、脳の中で驚くべきことが起きていることが分かったというのです。

ラットくんが動き回るとき、ある場所を通るとある細胞が反応します。そして、また、10cm進むと今度、また、別の細胞が反応します。つまり、ネズミの場所細胞が場所一個一個を記憶しているのだそうです。そして再びそこを通るとアツ!ここ来たことあるある、ここで曲がるんだよね!・・と。

場所細胞


 「場所細胞」が動物で発達しているのは生き物として場所というものの記憶がものすごく大切であるからなのです。こちらに行くと餌がある、こちらに行くと天敵がいる。

この場所細胞なるものを生かせば記憶に残っているのを思い出すことができる。つまり、思い出し細胞!というわけです。

例えば アツ!何しに来たんだっけ!と思い出せない時も、元の場所に戻ると思い出したりしませんか?
 場所細胞は、その場所に差し掛かると勝手に思い出してくれる細胞です。ですから場所と関連づけて何かを覚えると、この場所を思い浮かべるだけで自動的に思い出されてきちゃう。これが、私がいつも不思議に思っていた今日と昨日との位置の違いをよく覚えている訳のなぞだったんです。

 ここでうれしい情報があります。
 それは、ロンドンのタクシーの運転手の脳を調べた研究の結果です。話題は脳の中の「後部海馬」の体積。これは、場所細胞が集まっているところで、その体積を調べると、長年タクシーの仕事をすればするほど増加しているという結果が出たのだそうです。何千何万の道と場所を覚えれば覚えるほど場所細胞がふえるというのです。つまり、年を重ねてもどんどん増え続けるということになるのです。こんな素晴らしい場所細胞という細胞を私たちは持っているのですから、大いにこの細胞の活用を今後考えていきたいものです。(H)



jmcblog at 09:51 
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