2014年04月16日

逆向き列車

 『逆向き列車』というテレビ番組が、テレビ東京などで放送されています。これから職場へ向かおうとする人に対して、突然、いつもとは逆向きの列車に乗って好きな場所へ出かけてみないかと誘いをかけ、その人に密着するというドキュメンタリーです。

その番組とは関係ありませんが、旅行先などで列車に乗った時、目的地の方向は頭で理解しているのに、列車が思っていた方向と全く逆の向きに動き出して戸惑った経験はありませんか? 地形的な制約や、建設時の事情により、目的地の方向とは異なる向きに線路が敷かれた例は多くあります。

根室駅周辺 JR
根室本線(花咲線)の終着駅である「根室駅」は、北海道本島の最東端に位置する根室市にあります。根室駅の線路は行き止まりなので、発着するすべての列車が折返して釧路方面に向かいます。しかし、根室市から見て釧路市は西にありますが、線路は駅から東側に伸びています。また、根室駅よりも東(南東)には「東根室駅」があります。根室本線の場合、根室市街地の南にある高台をぐるっと迂回するように線路が建設されたため、このようなことになっています。ちなみに、東根室駅は日本の鉄道における最東端の駅です。


宇都宮駅周辺首都圏の例では、栃木県の「宇都宮駅」からJR日光線で日光方面へ行こうとするとき、列車は北のほうへ動き出すはず…と思いこんでいると、南方向に発車するので、驚く乗客もいるようです。日光線は宇都宮駅から南に向けて発車した後、すぐに西に進路を変え、鹿沼市内から北西へ向けて山を登っていきます。


所沢駅周辺 方面が一緒なのに、列車によって逆向きに走り出す、という駅もあります。首都圏で代表的なのは、西武鉄道の「所沢駅」です。所沢駅では、池袋方面と新宿方面の2本の上り線が、1つの島式ホームを挟み込む形で発着していますが、池袋行きは北に、新宿行きは南に向けて発車します。地図で所沢駅周辺の線路配置を見ると、2路線が所沢駅でX字状に交差していることがわかります。ホーム自体を立体交差とせず、地平面上に線路を配置したため、このような現象が生じました。地図では方向がつかみやすいのですが、ホームに立っているとどちらが上りでどちらが下りか混乱してしまいそうです。

 また、新潟市のJR「新潟駅」では、同じ「長岡方面」であっても在来線(信越本線)と上越新幹線では進む向きが逆になります。もっとも、在来線は地平ホーム、新幹線は高架線なので、往来する列車をホームで見ているだけでは混乱することはないと思いますが。

このほか関西では、JR「奈良駅」を発車する大阪方面行きの列車が、大和路線(関西本線)経由と学研都市線(片町線)経由の列車で、それぞれ反対方向に進んでいきます。どちらも大阪市内では「京橋駅」に停車しますが、大和路線経由の列車は高架ホームに、学研都市線経由は地上ホームに発着します。さらに、大和路線経由であっても、途中の久宝寺駅からおおさか東線経由で京橋駅に向かう列車は、京橋駅の学研都市線ホーム(地上ホーム)に到着するので、より複雑になります。 

 比較的自由に動き回れるクルマとは違い、列車は決められた線路の上を走るので、線路が目的地の方向に向かって伸びていくもの…と錯覚しがちです。地図を眺めつつ、方向感覚を研ぎ澄ましながら列車に揺られるのも、また楽しみの一つではないでしょうか。

※図はいずれも「地理院地図」より



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