2013年12月25日

19年で地形図から消えた鉄道

  本年11月24日に実施した第20回地図地理検定(一般)にて、下記のような問題が出題されました。

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第20回地図地理検定(一般)出題問題 
 ※一部文章改
 同じ場所で、発行年が違うA~Dの4枚の地形図があります。発行年の古いほうから新しいほうへ順に並べたとき、正しい順番はどうなりますか。
(2万5千分1地形図「小牧」:昭和62年、平成8年、平成14年、平成24年)

選択肢


(正解は本記事の最後にあります)


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 この地形図は、愛知県小牧市にある「桃花台(とうかだい)ニュータウン」周辺を示したものです。桃花台は、名古屋市中心部から北北東16kmほどの距離にある郊外型の新興住宅地です。
 AおよびCの地形図に描かれている鉄道は、2006年まで営業していた「桃花台新交通桃花台線(以下、ピーチライナー」という路線です。ピーチライナーは、「新交通システム」や「AGT(Automated Guideway Transit)」と呼ばれる小型のゴムタイヤ式車両を用いた高架鉄道でした。同種のものには、東京の「ゆりかもめ」や大阪の「ニュートラム」などが挙げられます(※1)

  桃花台新交通 (「地理院地図」を加工して作成)
A:小牧駅 B:小牧原駅 C:東田中駅 D:上末駅 E:桃花台西駅 
F:桃花台センター駅 G:桃花台東駅

 ピーチライナーは、桃花台ニュータウンへの足として1991年に開業し、わずか15年後の2006年10月に廃線となりました。現在のところ、日本の新交通システムで唯一の廃線事例となっています。
 では、なぜ廃止されてしまったのでしょうか。地図で桃花台周辺の交通状況を見てみましょう。
    桃花台周辺 (「地理院地図」を加工して作成)
 桃花台ニュータウン周辺には、西側に名鉄小牧線が、南方にJR中央線が通っています。ピーチライナーは路線の西側で名鉄と接続する形で建設されました。現在、名鉄小牧線は名古屋市側の平安通駅まで乗り入れ、地下鉄名城線と接続しています(※2)。しかし2003年までは、名古屋市中心部に向かう場合、名古屋市側の終着駅である上飯田駅から地下鉄平安通駅までの800mを徒歩で移動しなければなりませんでした。そのため、ニュータウン居住者は乗換えの不便さを敬遠し、南方にあるJR中央線・春日井駅まで自家用車で行き、そこから名古屋方面へ向かう手段を用いることが多かったようです。運賃や運転本数の面からも、名鉄経由と比べてJR中央線の利便性が圧倒的に高く、ピーチライナーの利用者を大幅に増やすことはできませんでした(※3)
 このほかにも、ピーチライナーは建設計画時、他の競合交通機関を考慮せずに需要予測を立てていたことや、桃花台ニュータウンの居住人口が当初の予想を下回ったことなどが、廃線に至った主な原因とされています(※4)。 このように、廃線の理由にはさまざまな要素がありますが、結局のところ、路線の建設ルートと沿線居住者の交通流動との間に乖離があったことが最大の問題であったといえます。
 ピーチライナーの線路が最初に地形図に掲載されたのは平成5年ですが、平成24年発行のものにはその表記がありません。地形図上では、わずか19年間しか載らなかったことになります。しかし、ピーチライナーの廃線跡は有効な活用方策も決まらないまま、現在も廃止当時のまま放置された状態となっています(参考→Googleストリートビュー

※1:ただし案内軌条の方式は異なる。
※2:上飯田〜平安通間は名古屋市営地下鉄上飯田線
※3:〈参考資料〉森川高行・永松良崇・三古展弘「新交通システム需要予測の事後評価―ピーチライナーを事例として―」運輸政策研究,7-2,2004年
※4:Wikipediaによれば、ニュータウンの計画人口は当初54,000人、その後40,000人に修正。小牧市ホームページによれば、2013年4月現在の当該地区の人口は24,908人。


問題の正解 D→C→A→Bの順


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