2013年08月29日

究極の地理空間情報都市

 ちょうど6年前の本日、2007年8月29日に地理空間情報活用推進基本法が施行されました。この法律(以下「基本法」と表記します)は、地理空間情報を活用し、安心して豊かに暮らす社会を実現するため、その推進に関する基本理念、国や地方公共団体の責務、施策の基本となる事項を定めたものです(同法第1条から要約)。

 地理空間情報とは、空間上の位置を示す情報(位置情報)とそれに関連づけられた情報(属性情報)とからなる情報、と第二条で定義されています。
 ひとは社会生活を営むなかで、いろいろ位置情報と関わっています。たとえば会話のなかで「いつ」「どこで」は重要な事項です。公共サービスや行政文書にも、位置・時刻に関する情報が必ず入っています。私たちは、多くの地理空間情報とともに暮らしているわけです。
 しかし、地理空間情報はいつも体系立って提供されるとは限らず、それによる不都合も少なくありません。幸いにも日本はじめ多くの先進国では、地図という優れた媒体が日常的に活用され、その恩恵を享受してきました。基本法が目指す社会では、地図を含む多様な手段で地理空間情報を共有し活用することで、一層の豊かさを実現しようとしています。

 そのような地理空間情報化社会の究極の姿を描いたSFが、半世紀以上昔の1956年に刊行されています。『2001年宇宙の旅』小説版の作者として知られているアーサー・C.クラーク著都市と星(The City and the Stars)』です。

moc259 10億年後()、地球最後の都市ダイアスパーに住む青年の冒険譚から、そこに至る人類史・宇宙史が明らかにされ、闇が迫りくる宇宙のなかで、新たな可能性が示唆されるという、『2001年・・』にも通じるやや哲学的なテーマを含んだ物語です。
 ダイアスパーでは、都市それ自体が市民社会を護りつつ外宇宙との接触を待つ一種の総合知性体のようにふるまいます。都市全域に遍在するセンサ・情報処理装置・万能の工作機械が、「記憶バンク」と訳された巨大データベースに連動して都市インフラを維持更新し、市民の輪廻転生まで管理しています。一見ディストピアのようにもみえますが、砂漠化し尽くした地球上に燦然と輝くダイアスパーを起点に、そのような価値判断を乗り越えるような、卓越したイメージが次々と展開されていきます。

 主人公が、時間軸に沿ってダイアスパー内部世界を検索するときに参照している立体画像は、現在の時層地図の最終的な発展型のようです。一方、地下遺跡の中に発見するダイアスパーの外の世界を表す巨大「地図」は、超絶的なテクノロジーに裏打ちされているハズにもかかわらず、17世紀オランダあたりの古地図を彷彿とさせます。
 さすがに今となっては古めかしい場面も少なくないのですが、「充分に発達して魔法と見分けが付かない」程になった地図類を垣間見てください。

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jmctsuza at 09:30 
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