2013年06月24日

富士山、世界遺産へ (4) 地図ふぇす・三保松原

 さる6月22日(土)、カンボジアの首都プノンペン市で開催されている国連教育科学文化機関(UNESCO)の第37回世界遺産委員会で、"Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration"(『富士山―信仰の対象と芸術の源泉』)を世界文化遺産に登録することが決定されました。
11chizufes 第11回地図ふぇす、来週末の7月5日(金)から7日(日)にかけて、日本地図センタービル(東京都目黒区)2階で開催します。今回のテーマは、世界文化遺産「富士山」です。富士山に関連したいろいろな地図類を展示いたしますので、是非ご来場ください。

 さて、UNESCOから諮問された国際記念物遺跡会議(ICOMOS)では、三保松原(静岡市清水区)が「山体と一体ではない」として構成資産から除外を勧告されていましたが、第37回会議ではここも一括して登録が認められました。
 三保松原が、ICOMOS勧告で除外された経緯として「消波ブロックが景観を阻害している」旨の議論があり、地元でもブロックの撤去など性急な対応も取りざたされました。これに対し、長年にわたって富士山およびその周辺地域の研究をつづけてきた静岡大学の小山真人教授は、ご自身のTwitterなどを通して三保松原の景観について地形営力の観点から冷静な対応を呼びかけました。

 小山教授によると、三保松原のある半島・砂浜は砂嘴(さし)という地形で、沿岸流による土砂の移動と堆積で形成・維持されているそうです。その土砂の主な供給源は、南アルプスに広い流域を持ち静岡市の南西約10km付近駿河湾に注ぐ安倍川であり、地震や大雨によって上流で大規模な崩壊が起き、河口から大量の土砂が供給されるたびに、砂嘴が少しずつ成長してきたそうです。
 しかし、土砂崩れや洪水氾濫を防いで人の命をまもる砂防・治水工事の進展とともに、安倍川からの土砂供給が減った結果、三保松原では海岸侵食が相対的に勝るようになりました。国土交通省も安倍川の治水と三保松原との関係を砂防・治水対策の重要な課題ととらえており、消滅の危機にあった三保松原は、消波ブロックで辛うじて維持されているのが現状、ということです。

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 国土地理院の電子国土 / 色別標高図に加筆 

 文化庁の公表資料(PDF・258KB)によると、UNESCOの世界遺産リストへの正式登録は、第37回会議の最終審議日である6月26日(水)になる見込みとのことです。


 富士山、世界遺産へ (1)
 富士山、世界遺産へ (2)
 富士山、世界遺産へ (3)

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