2013年05月04日
富士山、世界遺産へ (1)
富士山が世界文化遺産に登録される見通しとなったことが、5月1日に報道されました。フランス・パリ市にある国連教育科学文化機関(UNESCO)*の諮問により国際記念物遺跡会議(ICOMOS)**が勧告した内容が日本に伝えられたものです。
富士山については、最初は世界自然遺産としての登録が目指されていましたが、登山道における屎尿処理や山麓での過剰利用や不法投棄などの課題から、登録に関わる保全条件を満たすことが難しいとされました。このため、景観、信仰、芸術などを総合的に評価する文化遺産としての登録を目指すことに切り替え、文化庁がとりまとめ外務省を窓口としてUNESCOへ必要な資料を提出してきました。
富士山は、その高さから遙拝の対象となり、その険しさから山岳修験道の場ともなり、また古代には高頻度に噴火していたことから荒ぶる神を鎮めるため浅間神社が建立されました。江戸時代は「富士講」による信仰登山が盛んになり、それが形を変えて現在の行楽登山に繋がっていると考えられます。
富士山の雄大で長く裾野を引いた流麗な姿、時代によっては噴煙がたなびく姿から、絵画や詩歌など多くの芸術作品が生まれました。江戸時代の葛飾北斎の版画は、ヨーロッパの印象派絵画などに大きな影響を与えています。
「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」は、今年6月にカンボジア・プノンペン市で催される第37回世界遺産委員会***で正式に世界文化遺産として登録される見通しです。
しかし「文化遺産」といっても富士山自体は人工物ではなく自然の造形物です。気象庁・噴火予知連絡会によって定義された歴とした「活火山」であり、さらに防災の観点から「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山」にも選定されています。富士山の、主に地球科学的な話題について、次回に続きます。
* Organization des Nations Unies pour l'education la science et la culture / United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
** Conseil International des Monuments et des Sites
*** 37e session du Comite du patrimoine mondial
富士山、世界遺産へ (2)
富士山、世界遺産へ (3)
富士山、世界遺産へ (4)