2013年03月25日

見にウォーク(6) 熊谷と周辺 〈写真を追加〉

 (公社)日本地理学会2013年春季学術大会が、3月28日(木)〜31日(日)の日程で、立正大学熊谷キャンパスで催されます。
 立正大学熊谷キャンパス内には、地球環境学部地理学教室がります。地図学会や地理学会の会員として活躍されている研究者も多く、交流のある読者も多いでしょう。地理学教室の礎を築いたのは、近代の日本の地理学・地誌学の大家で地理学会の会長も務めた田中啓爾(1885〜1975)で、同大学情報メディアセンターには、氏のコレクションを収蔵する田中啓爾文庫もあります。

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 電子国土WebNEXTから色別標高図

 熊谷キャンパスは、埼玉県熊谷市の中心街から荒川を右岸に渡った江南台地上に立地しています。周辺は地形や地誌の面で大変興味深い場所です。大会最終日には、3班の巡検が企画されています。巡検テーマとこれと関連する周辺の見どころを紹介します(巡検コースそのものではないのでご注意ください)

〈北関東における水資源の管理と水環境の変化〉
 荒川沿いの低地は、扇状地から蛇行帯に移り変わるあたりになり、水利的にも重要な場所です。扇頂の寄居の近くには、埼玉県立川の博物館(かわはく)があり、治水・利水の歴史・現状を学ぶことができます。
 鴻巣市(左岸)と吉見町(右岸)との間に架かる御成橋付近(河口から約60km)は、堤防間の河川敷幅が約2.5kmあり「川幅日本一」とされています。
 行田市にあった忍城(おしじょう)は、周辺の水環境を活用した平城です。上杉氏、北条氏、豊臣氏など戦国の有力者との戦いにも落城せず、そのときの戦いぶりは、和田竜による小説『のぼうの城』を原作として映画化されました(2012年)。中心市街にある本丸跡地には行田市郷土博物館が、外濠跡には水城公園があります。
 行田市東南部の微高地にある埼玉(さきたま)は埼玉県の県名発祥の地です。『新編武蔵風土記稿』にも記された埼玉古墳群は、5〜6世紀の築造と推定されています。さきたま風土記の丘として整備され、県立さきたま史跡の博物館に関連資料が展示されています。
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 埼玉古墳群.電子国土基本図(オルソ画像)から  

〈秩父鉄道の発達と地域との関係〉
 寄居から緑色片岩の露頭で知られる長瀞を経て遡った秩父盆地は、かつては生糸の産地で、秩父鉄道の前身である上武鉄道も当初は繊維製品を運んでいました。近代以降は武甲山の石灰岩採鉱によるセメント産業が盛んになり、秩父鉄道の主要な輸送品となりました。最近では沿線人口やセメント需要が伸び悩み、秩父鉄道による石灰輸送も1970年代をピークに減少気味で引き込み線も減りましたが、いまでも産業革命からつづく本来の鉄道施設の姿をみることができます。秩父本線の他にJR高崎線の貨物駅とを結ぶ貨物専用の三ヶ尻線があり、セメント工場に直結した操車場は、交差する上越新幹線の車窓から一瞥できます。 
 現在の秩父鉄道は通勤路線(の支線)としての性格が強くなり、旧国鉄や大手私鉄で1960〜1970年代に使われていた車両が走っています。セメント列車や蒸気機関車牽引の「パレオエクスプレス」とともに、これらOB車両を目当てに週末には鉄道好きな人たちがよく訪れています。

〈埼玉県北部の農と食とまちづくり〉
 熊谷市近郊は、荒川や利根川の水利に恵まれ、江戸〜東京という大消費地にも近く、安定した農業が営まれてきました。
 中山道の宿駅であった熊谷市中心街では、旧街道は容易に辿ることができますが、1ヶ所だけ百貨店の建物で一見途切れています。しかし、この八木橋百貨店1階売場には旧中山道の位置に合わせてた通路があり、それに沿って「中山道」「熊谷宿」と記された灯籠が置かれています。東西出入り口付近には「旧中山道跡碑」と記された石碑も置かれており、土地に刻まれた街道空間の記憶は保存されています。
 
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 第一軍管地方二万分一迅速測圖原圖「熊谷驛」(部分).

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 電子国土基本図(オルソ画像)に加筆.

八木橋温度計
 八木橋百貨店の入口(2011)
 
  熊谷には地方気象台があり、2007(平成19)年8月16日に岐阜県多治見市と並んで、日本における観測史上最高の気温40.9度が記録されました。この夏の暑さを逆手に取ったキャンペーンが市役所を中心に展開され、夏には、八木橋百貨店の入口にあついぞ!熊谷のキャッチコピーとともに気象台の観測値を表示する大きな温度計が置かれます。cover467
 この温度計の写真を表紙として地図中心467(2011年8月)号は「アツイぞ!熊谷」特集を組み、立正大学の研究者の方々に寄稿いただきました。

 3月29日には公開シンポジウムもあります。地理学会員でない方も、地図中心467号を片手に、暑くも寒くもない季節の熊谷とその周辺を巡ってみてはいかがでしょう。

 ☆  ☆  ☆

 今回ご紹介した見どころは「見に(ミニ)ウォーク」にしては広範囲なので、公共交通でのアクセス情報を、下に掲げておきます

 川の博物館: 東武東上線
鉢形駅
 御成橋(川幅日本一): JR高崎線鴻巣駅
 忍城趾: 秩父鉄道行田市駅
 埼玉古墳群: 秩父鉄道行田市駅から路線バス
 秩父鉄道三ヶ尻線: 秩父鉄道
武川駅
 中山道と八木橋百貨店: 秩父鉄道上熊谷駅

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 八木橋百貨店の西口.脇に「旧中山道跡」の石碑がある.

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 八木橋百貨店1階売場.天井の黒い部分の直下が中山道の位置.


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