2012年03月09日

東京スカイツリーから天を望む

 世界一高い634mの自立式電波塔東京スカイツリー(R)が、着工から3年8ヶ月を経て2012(平成24)年2月29日に竣工し、建設を担った(株)大林組から事業主体である東武タワースカイツリー(株)へと引き渡されました。3月2日(金)には竣工式が執り行われ、東京スカイツリーとそれを囲む商業施設「東京ソラマチ(R)」およびオフィス棟からなる「東京スカイツリータウン(R) 」の、5月22日(火)の開業(グランドオープン)に向けた準備も最終段階を迎えています。
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千葉県松戸市からみた東京スカイツリーの上部

 ちょうど良い機会なので、地図センターの月刊誌地図中心3月号で「東京スカイツリーのある街」として特集を組むことにしました。地上450mの天望回廊からの眺めや可視範囲の地図、鳥瞰図、地上634mという高さを基に簡便に距離を測量する方法、周辺の土地の歴史散策など、地図好き地理好きには大変興味深い題材です。

 東京タワー(地上333m)に代わる新電波塔の建設は、2003年にNHKと民法キー局からなる在京放送事業社が「在京6社新タワー推進プロジェクト」を発足させたことに始まります。いくつかあった候補地のなかから、墨田区押上地区が、2005年に選定されました。新電波塔の名称が「東京スカイツリー」と決まった後、東武鉄道伊勢崎線の業平橋駅の貨物駅跡地で2008年7月に着工されました。「武蔵国」にちなんで高さ634mに決まったは2009年10月、目標の高さに到達したのは2011年3月でした。

 東京スカイツリーへの関心が高まったのは、建設中の2010年3月に東京タワーの高さを超えた頃だったと思います。世界一の高さに向かって伸びる建設中のタワーを見ようと、繁華街の浅草から至近にありながらいまいち地味だった押上・業平地区に、多くの人々が訪れるようになりました。地元関係者らが新電波塔の誘致に向けて「押上・業平橋周辺地区まちづくり協議会」を設立していましたが、現在では「おしなり商店街振興組合」が、訪問客に向けたいろいろなキャンペーンを行っています。東京スカイツリーを核とする地元の盛り上がりの一端を、このブログでも『墨東( 旧・寺島町)を歩く』前編後編)と題してリポートしました。

 高い塔を建て、空を飛ばずに天上に登ることへの憧れと不安は、神話・民話や小説の題材になっています。 聖書にでてくる「ヤコブの梯子」は人間が昇るのではなく、空を飛べるハズの天使が降りてくる話、同じく聖書の「バベルの塔」は言語の起源のような話で塔は脇役でした。人が登る塔(のようなもの)の話として代表的なものはイングランド民話をもとにした『ジャックと豆の木』(Jack and the Beanstalk)でしょう。雲の上にある巨人の城に主人公が乗り込んでいって宝物を奪ったうえに、城の主人を退治してしまうところは、『桃太郎』と似ています。考えてみれば随分と横暴な話ですね。登り詰めた高い所に大きな城があるというのも、何だかアンバランスな気がするのですが、これを星々に架ける橋近代科学で裏付けた2篇のSFが1979年に刊行されました。チャールズ・シェフィールド著『星ぼしに架ける橋』、アーサー・C・クラーク著『楽園の泉』です。両作品ともに軌道エレベータを題材とし、それぞれの作者が独自に構想し書き上げた長編で、偶然同時期に刊行されたことで話題になりました。
 軌道エレベータとは、赤道上空約3万6千kmの円軌道を地球の自転と同期して周回する静止衛星を重心として、そこから地表とその反対側に向けてチューブを延ばし、地上からエレベータのように宇宙に向かうことができる輸送手段です。軌道エレベータの概念は1959年頃にロシアの科学者によって提唱されていましたが、楽園の泉その建設工程を、フィクションとは言え、初めて具体的に描いてみせたのが、これら2作品です。現在の技術では、強大な潮汐力に耐える資材を、建設に必要なだけ安定的に供給できる見通しがないことなどから、未だ空想的な段階に留まっていますが、基礎的な技術研究が一部で始まっています。

 東京スカイツリー天望回廊の地上450mは、定期航空の巡航高度には届きませんが、ヘリコプタや小型遊覧飛行機の飛行高度には匹敵します。空を飛ばず、かといって山に登るのでもなく、垂直方向の移動で到達することによる高度感は、また格別のものになるでしょう。天望回廊からさらに宇宙の彼方に続く梯子を想像してみるには、夕方から夜にかけての時間帯が向いているかもしれません。

東京スカイツリー(R)は東武鉄道株式会社と東武タワースカイツリー株式会社の、東京スカイツリータウン(R)と東京ソラマチ(R) は東武鉄道株式会社の登録商標です。

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