2011年05月13日

『東北地方太平洋沖地震/東日本大震災(2) 最大規模の地震』


東北地方太平洋沖地震/東日本大震災 (2) 最大規模の地震 

  今回の地震はモーメントマグニチュード(Mw9.0で、日本列島付近で観測された最大の地震となりました。 文書記録から推定した近代以前の地震を含め、 これまで最大規模だった地震は、1707年に発生したMw8.7 の宝永地震でした。この地震は、駿河湾から紀伊半島沖〜四国沖にかけての駿河トラフ 〜南海トラフで、概ね百年毎に発生している大地震のなかでも、トラフ沿いの一連の断層が同時に活動したと見られる地震で、今世紀中の再来が懸念されている「東海・東南海・南海地震」のなかでも最大のものでした。一方、東日本沿岸の太平洋沖にある日本海溝付近では、次の発生が迫っているとされてきたマグニチュード (M7クラスの宮城県沖地震はじめ、海溝沿いの各地域で各々数十年間隔でM7.07.5程度の地震が起きていて、政府の地震調査研究推進本部では、各地域毎の長期評価を公表していました。そしてこれらの地域では、津波災害が大きな課題でした。

 岩手県南部から宮城県北部の三陸海岸はいわゆるリアス式で、山地・渓谷がそのまま海に没した形の湾や入江が連なり、これまで数十年間隔で大きな津波を被ってきました。一方、仙台平野から福島県の浜通り地方にかけては直線状の浜が続き、三陸海岸に比べて津波被害は小さいとされてきました。
 ところが、平安時代に編纂された『日本三代実録』には、869(貞観11)年に陸奥国で大地震が発生し津波によって仙台平野にあった国府が被災したという記述があります。また、これに関係しているらしい伝承が、茨城県、福島県、宮城県の沿岸部に断片的に伝わっています。独立行政法人や大学の研究者たちが、仙台平野で地質調査を行ったところ、 これらの古記録を裏付けるような津波堆積物を見出し、数十年間隔の地震・津波より一回り大きな地震・津波が数百年〜千年に1度くらいの間隔で起こっていたらしいことが判ってきました。この研究は、2007年の第173回地震予知連絡会で報告されました。
 いま率直にふり返ると、当時は本格的な調査研究が始まったばかりで、一部の研究者は危機感を持っていましたが、多くの関係者には「こんなことも起こり得るかも知れない」と考え始めた段階ではなかったかと思います。その後3年間で調査研究が進みました。過去3千年間に貞観津波含め4回の大津波があって、このうち2回は日本海溝の地震によることが明らかになり、津波の到達範囲から見積もられた貞観地震の規模はM8.4と推定されました。この調査研究結果は、政府の地震調査研究推進本部の長期評価へ反映され、本年度にも公開される手筈になっていたそうです。
  しかし、自然は人間の営みや都合など一顧だにせず、その圧倒的な力を見せつけました。2011年3月11日、推定されていた貞観地震よりさらに大きな地震と大津波が発生し、それによって引き起こされた東日本大震災に、いま日本の国が総力で取り組んでいるのです。

  東日本大震災で被災された方々に謹んでお見舞い申し上げるとともに、救援活動等に携わる方々の安全・無事を願い応援いたします。


「地震・津波に関連する地図類を紹介するWebページ」へは
http://www.jmc.or.jp/other/earthquake110314/にリンクします。

   

 

 





 



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