2011年01月14日
『山、海へ行く。そして空へ行く。』
神戸港に浮かぶポートアイランドは、六甲山地から切り出した土砂で海を埋め立てた人工島。1981(昭和56)年に『ポートピア’81』という地方博が街開きとして開催され、今年で30年を迎えます。その後、団地も造られ、港湾施設だけでなく、居住・生活空間としても発展してきました。
その人工島と既成市街地を結ぶ唯一の公共交通機関がポートライナー(神戸新交通ポートアイランド線)。ポートライナーは営業路線としては日本で最初の新交通システムで、『ポートピア’81』会場への交通手段として開業したので、こちらの歴史も30年。もう“ 新 ”交通とは言えないかもしれません。新交通システムについての詳しい説明は専門家に譲りますが、30年前に登場した際、一番驚いたのが、“運転手さんがいない”こと。“Automated Guideway Transit(AGT)”といい、自動で案内軌道上を走る交通機関で、全てコンピュータで制御され、遠隔操作されているのです。現在はポートライナーに限らず、東京湾の「ゆりかもめ」やマレーシアのLRT(軽電車)など世界各地で運転手のいない乗り物が運行され、ものめずらしい乗り物ではなくなりました。とはいえ、驚きはしないまでも、「運転手さんやっぱりいないよねー」と何となく確認してしまうのは私だけでしょうか? ホームにはホームドアが完備されているため転落の心配もなく、乗り降りの様子は監視カメラが見てくれているので、駅員さんがいない場合も多く、無人駅も数駅あります。また、全線が専用の高架で出来ているので踏切事故や交通渋滞も起きません。
(地図画像は電子国土より)http://portal.cyberjapan.jp/denshi/opencjapan.cgi?x=135.217333&y=34.664629&s=10000
30年前に街開きをした第一期地区だけでなく、分譲が続く第二期地区では「神戸医療産業都市」の形成が進み、さらにその南には神戸空港島が作られました。それにともなってポートライナーの路線も延伸し、山をバックに街から海へ、海上都市を抜けると終点の神戸空港からは飛行機が空に向かって飛んで行きます。都市計画の善し悪しについては意見が分かれるところでしょうが、街を俯瞰しながらポートライナーに乗っていると、“空を乗り物が走り、機械で街が安全に動いている”、そんな子供の頃に描かれていた未来都市のイメージが目の前にあるのを感じます。
無事故を誇るポートライナーも、この30年の間に不通になった時期があります。16年前、1995(平成7)年1月17日の阪神・淡路大震災。ポートアイランドは液状化による地盤沈下が起こり、ポートライナーも橋脚や駅舎などに被害を受け、長期間運休を余儀なくされました。7月31日に全線開通するまでは、代替バスが島の交通を支えました。震災後、多くの仮設住宅が建設された時期もあります。震災に続く不況の影響も深刻ですし、決していいことづくしの描いたとおりの未来ではなく、現実を積み重ねての現在があります。でも、第一期地区の街路樹や公園の木々は、とても海の上の造成地とは思えないほど根を張って成長しています。同じように、人々の暮らしの積み重ねとともに街も成長し、この場所で生まれ育ってきた世代にとってはまぎれもなく地に足のついたふるさとであり、原風景となるのでしょう。
今年、島内の施設の移動や新設にともなって駅名変更が予定されているそうです。そのうちの一つは次世代スーパーコンピュータがやってくることから「京(けい)コンピュータ前駅」になるそうです。新しい顔を加えて街が発展していく様をまた先頭車両の一番前の席から眺めに行こうと思います。
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