2009年11月27日
地形図はどのようにして作られる(8-3)
前回は、地形図がいろいろな制約や約束ごとによって作られていることについて述べましたが、その背景には、地図を「見やすく」、「使いやすく」という作り手の方針が基本にあります。
私たちが地表面の景観を平面的に観察する手段として、(1)上空から直接見る、(2)空中写真で見る、(3)地図で見る、などがあります。 (1) と(2) は、直接的に対象物を観察しますが、(3)は地表面を限られた地上で間接的に観察します。 特に、地図は、縮尺比で表示されることから、どうしても「表現されるもの」と「表現されないもの」に分けられます。 これが地図表現上の制約(取捨選択)になります。
では、地形図の表示対象物は、どのような約束ごとで取捨選択されるのでしょうか ? それは、次の原則で行われます。
1. 表示対象物は、 所定の縮尺に応じて適切に選択が行われ、正確に表示されます。
2. 地域的に特徴のある対象物は、地図作製目的を考慮して選別します。
3. 表示対象物で、永続性の高いものは省略しません。
4. 表示対象物が他の表示対象物に比べて相対的に重要度が低くても、局地的に極めて必要度の高いものは省略しません(山小屋など)。
以上の原則に従って採択された対象物は、記号化されて描画されますが、一般に実際より誇張 (拡大) して表現されています。 例えば、空中写真で判読が困難な三角点や水準点が、地図上で読み取りやすいのは誇張化された結果です。 この誇張の度合いは、縮尺が小さいほど大きくなります。このため、表示対象物の全てを正しい位置に表示することはできません。 次回では、表示対象物の転位 (移動) の基本について記述します。