2012年12月

2012年12月26日

 新年早々の2013(平成25)年1月6日(日)、ニフティ株式会社が運営する東京台場のライブハウス東京カルチャーカルチャーで、(一財)日本地図センターが協力し地図ナイト4・新年会「凸凹vsスリバチ!東京びみょ〜地形!が催されます。地図・地理・地形の大好きなひとたちが集まり、東京の微地形を肴に飲んだり食べたりしながら楽しく語り合います。

  地図や鉄道について多数の著書があり最近は東京凸凹地形案内を監修された今尾恵介さん、《東京スリバチ学会》の会長で凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩著者の皆川典久さん、地図センターの気象予報士・平井史生、地図センター研究員でエンタメ担当の小林政能が出演します。

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  17時に開場、17時30分にイベントを開始し、20時までの予定でたっぷり楽しみます。前売り券は、イープラスやファミリーマート店頭のファミリーポートで24時間受け付けています。ネット予約も可能です。お一人2,800円は一見高いようにみえますが、1:25,000デジタル標高地形図東京都区部」付き(当日開場で受け取り)です。

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 ライブレポート
 
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イベント | 本の紹介

2012年12月25日

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 西武鉄道の座席指定特急レッドアローは、1969(昭和44)年10月、西武秩父線(吾野〜西武秩父)の開通とともに運転を始めました。
 それまでの西武鉄道は、近郊農村から宅地へと変貌しつつあった東京西北部郊外の急増する通勤需要に応え、第二次大戦で被災した国鉄車輌をたたき直した電車を大量投入し、もっぱら「質より量」の輸送を展開していました。しかし正丸峠を越えて秩父地方に進出するにあたって、山岳路線に耐える高性能車を新製するとともに、観光需要も見込んで特急車も導入しました。

 明治学院大学教授の原武史さんの近著『レッドアローとスターハウス』 によると、「山岳路線を走る観光列車」のイメージから、当時のスイスの電車に倣って車体に赤いストライプが描かれ、「赤い矢」という意味の愛称が付けられたということです。しかし、沿線の団地景観が旧社会主義圏の住宅と似ていたことと同じように(そして、おそらくは偶然に)、この愛称名は旧・ソ連〜現ロシアの代表的な列車《Красная стрела》(クラスナヤ・ストレラー)と同じ意味だったのです。

 埼玉県西部、秩父盆地を中心とする一帯は、大宝律令(701年)により无邪志国と併せて武蔵国となる以前は、知知夫国という独立した地域でした。初代国造の知知夫彦命が祖神の八意思兼命を祀った秩父神社は、日本三大美祭かつ日本三大曳山祭の一つ「秩父夜祭り」で知られています。
 和同開珎に使われた銅、近代産業を支えた石灰石など、天然資源に恵まれ、江戸〜東京にも近いことから鉱業が栄えました。石灰石運搬のために敷設された秩父鉄道は、いまでも引き込み線や側線が多く貨物鉄道の特徴を備えています。そして西武秩父線の敷設も当初は石灰石輸送への進出が主目的でした。
 一方、西南日本外帯に連なる大起伏の関東山地(秩父山地)に囲まれた秩父地方には、独自の文化が保たれ、いくつもの社寺や霊場が残っています。1884(明治17)年には、自由民権運動のさきがけともいえる秩父事件が勃発し、中央の政治への異議を投げかけています。さらに近年では、アニメの舞台となったことで、その「聖地」としても紹介されています。

 産業発展に寄与し行楽客を受け入れつつも、大都市とはつかず離れずの関係を保ってきた秩父地方は、列強に囲まれながら中立を守りとおし、宗教改革の舞台となった一方で伝統文化が残り、近代には金融と観光とで逞しく生きてきたスイスと、華やかなリゾート地ではないにしても、どこか通じるところがあるのかもしれません。
  地図中心483号(2012年12月号)の特集は「秩父〜その聖なる空間」です。

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地図中心 

2012年12月21日

 1946(昭和21)年12月21日4時19分ころ、潮岬南方沖の南海トラフ付近を震央とするマグニチュード(Mj)8.0の大地震が発生しました。海底のフィリピン海プレートが日本列島を載せたユーラシアプレートの下に沈み込む境界の断層が活動し、大きな地震動と津波とが南西日本一帯を襲いました。昭和南海地震です。

 駿河湾・遠州灘から四国沖にかけての南海トラフに沿って、東に隣接する海底では2年前の1944(昭和19)年12月に昭和東南海地震(Mj7.9)が発生しています。戦争で疲弊していた国土を、巨大な自然災害が相次いで襲ったのです。南海地震・津波による死者行方不明者は1330人、特に空襲を受けていた高知市の被災が著しかったと伝えられています。

 南海トラフを震源域とした大地震は、歴史時代だけでも概ね100〜150年くらいの間隔で繰り返し発生していることが知られています。政府の地震調査委員会が2001(平成13)年に公表した『南海トラフの地震の長期評価について』(PDF:9.6MB)のなかで、確実な歴史資料が得られた5時期の地震について詳しく記載しています。各時期の地震は次のとおりです。

・1498年(明応):南海(資料なし)・東南海(8.3)
・1605年(慶長):南海+東南海(7.9)・津波地震?
・1707年(宝永):南海+東南海(8.6)・同時発生
・1854年(安政):南海(8.4)・東南海(8.4)・1日後
・1944〜1946年(昭和):南海(8.0)・東南海(7.9)・2年後

 東南海地震が起きると、同時または直後に南海地震が連動して発生するパターンが見てとれます。宝永地震は、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の発生まで日本史上最大の地震とされてきました。また、宝永と安政の地震では震源域が駿河湾海底(駿河トラフ)におよんでいたと考えられています。

 地震調査委員会によると、次の南海地震が2001年の後40年間に発生する確率は60%程度と試算されています。これまでの発生間隔からみて、おそらく今世紀半ば頃までには確実に発生するでしょうから、いまから慌てずに備えておくことが肝要です。 

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 南海トラフの概略位置図.(地震調査委員会, 2001から)
 領域X:南海地震の震源域,領域Y:東南海地震の震源域

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コラム | 防災

2012年12月19日

 12月2日(日)に実施した地図地理検定、今回も多くの方々の受検ありがとうございました。ようやく採点・集計作業もおわりましたので、試験結果と正解・解説記事とを地図センターWebサイトにアップしました

 ⇒ 第18回地図地理検定(一般)の解説 (PDF:31.3MB)
 ⇒ 第18回地図地理検定(専門)の解説 (PDF:27.7MB)

 今回の検定では地図地理力博士が2名、準地図地理力博士が2名誕生しました。一般の合格者は160名、専門3級は77名、同2級は20名、同1級は13名の方々が各々認定されました。最高得点は、一般では100点、専門では94点でした。

 なお、この機会に地図地理検定ホームページも更新し、参考書に委員のひとり政春尋志さん著の地図投影法(朝倉書店・2011年9月刊)を加えました。地図投影法(図法)について、日本で最も新しくかつ最も正確な教科書です。

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地図地理検定 | 本の紹介

 12月16日に投票が行われた衆議院選挙が終わりました。 今回は定員480議席のうち294議席を獲得した自由民主党が第一党となりました。一方、日本共産党は8議席にとどまり伸び悩んでいます。

 1989年の「東欧革命」、1991年の旧ソ連邦解体以来、日本では社会主義への期待は色あせてしまいました。しかし、いまから40年前の1970年代前半、自由民主党の単独長期政権が続いていたにもかかわらず、国や地方の選挙では社会主義を掲げる政党が議席を伸ばし、それらの党に支持された政治家が首長を勤めるいわゆる「革新自治体」が大都市を席巻していました。特に1972年の総選挙で日本共産党は結党以来最高の38議席を獲得し、まさに「確かな野党」として政策レベルにも相応の影響力を持っていました。
 当時の社会主義政党の大きな支持母体は、労組などの組織票を除くと、大都市郊外の団地に住む人たちでした。日本住宅公団(現UR)が建設した団地に住む人たちは、学歴・所得ともに比較的高水準にあり、社会主義の古典的理論によれば「ブルジョア」に分類されるはずでした。

red-arrow このような時代状況を、地理空間の視点から考察した本があります。明治学院大学教授の原武史さんによるレッドアローとスターハウス〜もうひとつの戦後思想史(新潮社・2012年9月刊)です。
 レッドアローとは、西武鉄道が走らせる座席指定特急車両の愛称、スターハウスとは、団地景観に変化を与えるよう設計された星形の平面形を持つ集合住宅棟のことをいいます。

 本書では、武蔵野台地を切り拓いて多くの大規模団地が建設された西武鉄道沿線という時空間を記載していきます。原さんが提唱している空間政治学です。論考に際しては、原さん自身の団地経験に加え、日本共産党の前中央委員会議長で西武鉄道沿線の公団ひばりヶ丘団地にも住んだ不破哲三さんへのインタビュー、そして当時の団地自治会報などを発掘し読み込むなど、極力一次資料まで辿っています。
 詳しくは本書を読んでいただくとして、そこで明らかになるのは、高度成長期の日本が目標としたアメリカ型生活のモデルと思われた団地の景観は、当のアメリカには無く、むしろ旧ソ連や東欧の大都市近郊に建てられた大規模住宅群に似ており、そこで営まれる一種の「共同生活」は、社会主義思想との親和性が高かった、という逆説的な状況です。1974

 本書の最終章で、ニュータウン以前の大団地の最終形ともいえる公団滝山団地(東久留米市)に辿り着きます。そして、大きな反響を呼んだ原さんの問題作滝山コミューン一九七四(講談社・2007年5月刊)へと繋がっていきます。



次回は、特急レッドアローに乗って秩父へと向かいます。
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本の紹介 | コラム

2012年12月16日

ご来場ありがとうございました!
第10回地図ふぇす


  2012(平成24)年も押しつまってきました。12月14日(金)から16日(日)にかけて、東京都目黒区にある日本地図センタービル2階で 地図ふぇす を催しました。

 (一財)日本地図センターは、東京都目黒区にある日本地図センタービルのご近所のひとたちとの交流の場として、年2回「地図ふぇす」を催しています。今回は第10回目。前回に続いて街道シリーズの2回目ということで、今回のテーマ(サブタイトル)は「地図で見る日本の五街道2 陸前浜街道から三陸浜街道へ」。

 お察しのとおり、本年10月13日から11月23日にかけて、東北地方太平洋岸を巡回した地図展2012の、いわばスピンオフ展示です。同地域を表示した江戸期の伊能中図、明治期の輯製20万分1、平成期の20万分1地勢図を揃えました。

 地図が好きな方、東北地方に興味のある方、地図展2012を見に行くチャンスを逃した方、地図カレンダーを入手されたい方、「地図ふぇす」にご来場ありがとうございました。

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イベント | お知らせ

2012年12月08日

 12月8日は、対米英開戦記念日(太平洋戦争開戦記念日)です。
 1941(昭和16)年12月8日午前3時19分(現地時間7日午前7時49分)、日本軍がハワイ・オアフ島真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲攻撃しました。船橋海軍無線電信所から送信された戦闘行動開始を促す暗号電報が「ニイタカヤマノボレ1208」、攻撃成功を告げる「トラトラトラ」は映画化作品の表題で有名になりました。

  本来はこの攻撃に先立ち、駐米日本大使館からアメリカの国務長官に、最後通牒を手渡すことになっていましたが、手違い等から文書作成が遅れ、実際に手渡されたのは、アメリカ東部時間7日14時20分−ハワイ時間で8時50分となりました。事実上の奇襲攻撃となり、「リメンバー・パールハーバー」の合言葉とともにアメリカ側の戦意を却って高めてしまいました。

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 地球地図データによる電子国土

 東京とワシントンDCとは、経度にして約143度離れており、途中に日付変更線もあって14時間の時差があります。遅れた布告でもまだ12月7日。大使館の対応を含め、この時差が十分に考慮されたのか気になるところです。

 同じ12月8日、日本陸軍はマレー半島での上陸作戦(マレー作戦)を開始。さらに12月10日には、ドイツのヒトラー総統がアメリカへ宣戦布告しています。第二次世界大戦はヨーロッパ・北アフリカ地域だけでなくアジア・太平洋地域を含む規模へと拡大し、日本は、1945年9月2日に降伏するまで約3年9ヶ月間の、連合国との戦争に入っていったのです。

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コラム 

2012年12月07日

 1944(昭和19)年12月7日13時35分、紀伊半島東部沿岸の熊野灘、三重県尾鷲市沖約 20 km (北緯33度8分・東経136度6分)を震央として南海トラフ沿いの海底にあるプレート境界の断層が活動し、マグニチュード(Mj)7.9の地震が発生しました。昭和東南海地震または1944年東南海地震と呼ばれる巨大地震です。
 この地震では、東海地方を中心に四国近畿から北陸、関東甲信越地方にわたる広い範囲で震度4〜6の強い地震動が観測され、地震動と海底の地殻変動によって発生した津波が紀伊半島沿岸から東海地方にかけて大きな被害をもたらしました。
 当時は第二次世界大戦の最中で、地震・津波とそれによる被害は国民に知られず調査も十分になされなかったようですが、死者行方不明者は約1千2百万人といわれています。

 このような時代の状況でしたが、科学的な観測の面では画期的な成果が得られています。
 昭和時代初期に東海道沖および南海道沖の巨大地震発生を予測した、東京帝国大学の今村明恒博士(1870-1948)の要請に基づき、地震直前まで陸地測量部が静岡県の掛川から御前崎付近の水準測量を行っていました。 
 12月7日の観測では4mmを越える誤差が見出され、また水準儀の気泡が安定しないなどの障害から観測を中止していたところ、その数十分後に地震発生に至ったのです。その後の研究で、これらの異常は昭和東南海地震のプレスリップと推定され、このことが想定される東海地震予知の根拠の可能性とされています〈⇒気象庁|東海地震について〉。
 このときの観測手簿は、国土地理院により大切に保管されています。

 昭和東南海地震の2年後の1946(昭和21)年、昭和南海地震(Mj8.0)が発生しています。

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1944東南海地震および1946南海地震の震源モデル(Sagiya&Thatcherによる)

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コラム | 防災

2012年12月02日

 第18回地図地理検定、本日(12月2日)実施しました。今回も多くの方々に受検いただき、ありがとうございました。

◆検定日
    2012(平成24)年12月2日()

◆検定時間/問題数
    地図地理検定(一般):13:30〜14:20/25問
    地図地理検定(専門):15:00〜16:00/50問

◆実施都市 会場
札幌市 札幌市エルプラザ電子国土で表示
〈アクセス〉JR札幌駅 北口から徒歩約5分、札幌市営地下鉄さっぽろ駅から徒歩約10分

仙台市 仙台市民会館電子国土で表示
〈アクセス〉仙台市営地下鉄 勾当台駅 公園2出口から徒歩約10分

東京都 国士舘大学梅ヶ丘校舎電子国土で表示
 〈アクセス〉東急世田谷線 松陰神社前駅または世田谷駅下車徒歩6分、小田急小田原線 梅ヶ丘駅下車徒歩9分

名古屋市 名古屋国際会議場電子国土で表示
 〈アクセス〉名古屋市営地下鉄名城線 西高蔵駅または日比野駅下車徒歩約5分

大阪市 大阪産業創造館電子国土で表示
 〈アクセス〉大阪市営地下鉄中央線 堺筋本町駅 2番出口から徒歩約5分

広島市 広島まちづくり市民交流プラザ電子国土で表示
 〈アクセス〉広島電鉄市内1号線(宇品線)袋町電停から徒歩約3分、1,2,6号線(本線)紙屋町東電停から徒歩約7分

福岡市 ゼンリン福岡ビル電子国土で表示
 〈アクセス〉JR・福岡市営地下鉄 博多駅 筑紫口から徒歩約9分

◆試験会場に当日持参するもの
鉛筆(HB,B)、消しゴム
(必要な方は)ルーペ、虫眼鏡
受験票
(学割の方に限り)学生証、生徒手帳または年齢を確認できるもの(保険証のコピーなど)

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