2012年04月

2012年04月13日

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 熊本城と市電のLRV(熊本市交通局提供)

  2012(平成24)年4月1日、九州の熊本市(人口約73万人)は、政令指定都市に移行しました。九州では3番目、全国で20番目になります。地図センターの月刊誌地図中心4月号の特集は政令指定都市 熊本です。本特集号編集にあたっては、熊本市役所の全面的なご協力475coverをいただきました。移行業務でご多忙にもかかわらず、それぞれの担当部署や文化財専門相談員の方々に、熊本市の歴史、現勢、地下水、交通、食材や工芸について寄稿いただきました。この場を借りてお礼申しあげます。

 阿蘇カルデラから流れ出た白川が、火山山麓から有明海に面する沖積平野に入る付近の、丘陵地に囲まれたところに、熊本城を要とする中心市街があります。世界有数の規模を誇る阿蘇火山ではぐくまれた適度なミネラルを含む地下水によって、熊本市の上水は100%まかなわれているそうです。森に覆われた竜田山(標高152m)の麓にある熊本大学周辺の緑の多い市街は、小泉八雲や夏目漱石も教鞭をとった旧制第五高等学校の時代からの、文京都市の面影を今に伝え、中央ヨーロッパの都市にも通じる風格があります。

  熊本市は九州のほぼ中央にあり、交通の便が良いところです。福岡市との間に1日100往復以上も走る路線バスは、高速道路が未開通の時代からの歴史を持ち、都市間高速バスの草分けです。市内交通も充実しています。熊本市電は、戦後一時期は日本の多くの都市と同様に路線縮小が相次ぎましたが、1976(昭和51)年に存続が決まった後、積極的な施策を次々に打ち出してきました。
  熊本市交通局よりいただいた特集号の記事に基づいて、熊本市電の先進性についていくつかご紹介します。

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 熊本城と熊本市役所付近の地形図(電子国土から)

 いま先進国の多くの都市では、路面電車(トラム)の拡充が図られていて、軌道の新設、過去に廃止した軌道の再生、既設軌道の改良や延長、乗降しやすい新車輌の導入などが、都市のインフラ整備として実施されています。このような都市では、ひとは階段やエスカレータの昇降なしで手ぶらで乗り込み、歩行者とほぼ同じ目線で街区を眺めながら運ばれ、下車したその場から街歩き、というスタイルが定着しています。このような現代的なシステムに脱皮した路面電車交通をLRT(Light Rail Transit)、そこを走る高性能路面電車をLRV(Light Rail Vehicle)といいます。

 日本は何故かこの流れに乗り遅れていました。未だに「路面電車」というとノスタルジーでしか捉えられない人も多いのですが、最近では、国土交通省道路局が都市の渋滞緩和策のひとつとして、LRTの導入支援を展開しています。同省ではLRTを「次世代型路面電車システム」と呼んでいます。

 そんななかで熊本市電は、広島市や富山市などとともに、日本におけるLRT化の先頭を切ってきました。熊本市電の日本初を列挙すると、1978年の車輌の冷房化、1982年のインバータ制御車導入、1997年の超低床車導入、そして2002年の樹脂固定軌道です。
 主動力に交流モータを用いるインバータ制御は、日本で造られる電車の大部分に普及しました。新幹線の300km/h運転やリニアモータ地下鉄、さらにいえば電気自動車やハイブリッド車は、インバータ制御なしでは実用化できなかったはずです。
 乗降しやすい超低床車は、1997年当時の日本には無かった技術で、先進地ドイツのメーカから部品を輸入し、日本の車輌メーカで組み立てていました。
 樹脂固定軌道は乗り心地改善と騒音防止に高い効果があります。さらに最近では、自動車との動線の交錯を少なくするサイドリザベーションなど、先進国では常識になっている軌道構造も積極的に取り入れられています。

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   サイドリザベーション(熊本市交通局提供)

 熊本市電はいま、成熟した市街での既設路線の改良という制約の多い条件のなかで、LRT化を着々と進めています。これらが完成した暁には、都市の風格にいっそうの磨きがかかることになるでしょう。
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   火山土地条件図「阿蘇山」



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