2011年02月

2011年02月09日


霧島山の新燃岳(しんもえだけ)が噴火を起こしました。火山噴火予知連絡会の見解によれば約300年ぶりの本格的なマグマ噴火だということです。日本列島はここ数年大災害を引き起こすような地震も火山噴火もなく、比較的静かで平穏でしたが、地震列島、火山列島といわれる日本に平穏な日々はそう長くは続かないことを改めて実感したところです。今回の噴火では大量の降灰があり、周辺の住民の生活に多大なる影響を及ぼしています。長期間の活動継続も予想されるところですが、と幸いにも今回の活動による死者・行方不明者ゼロが続いていますので、早急な終息を願うばかりです。
  霧島山は複数の火山体からなる火山群ですが、近年活発な活動を繰り返しているのは、今回噴火した「新燃岳」とその南東方向に位置する「御鉢(おはち)」です。御鉢はここ数百年ではもっとも活発で、幕末に坂本龍馬が妻おりょうと一緒に登った、天の逆鉾がある高千穂峰の真西わずか1km足らずの距離にあります。龍馬の登山コースは御鉢経由だったようですが、龍馬も噴煙を見ながら登山していたのでしょうか。霧島山は気象庁による活火山のランクではBとなっていますが、今回の噴火によってランクが1つ上がってランクAになるかもしれません。

現在、防災関連機関や大学等で様々な観測がされ、新燃岳の噴火の今後の推移を予測する努力がされているところです。火山にはそれぞれに固有の、噴火の「クセ」みたいなものがあるのですが、その「クセ」を把握するのが難しいようです。「クセ」には地震学的、測地学的な見地からの「クセ」と地形地質学的な観点からの「クセ」がありますが、北海道の有珠山が2000年に噴火した時は、地震学的、測地学的な「クセ」がだいたいわかっていたことにより、噴火直前に周辺住民を避難させることができました。地震学、測地学に関する近代的な観測がされるようになったのはせいぜいここ100年くらいですので、年中噴火を繰り返しているような火山であれば地震学的、測地学的な「クセ」はつかみやすいのですが、1990年から噴火が始まった雲仙普賢岳や今回のように何十年〜何百年ぶりに噴火する火山であればそうはいきません。

では、そのような火山は防災上どう対応すればよいのでしょうか。火山噴火といってもいろいろな現象があって、今回の新燃岳のように主に火山灰を出したり、伊豆大島三原山のように主に溶岩を流したり、雲仙普賢岳のように主に火砕流を起こしたりします。もちろんこれらの現象は複合的に発生することがほとんどであり、周辺に人がいれば多大なる災害をもたらすわけですが、実は火山はこれらの活動によってみずから成長し現在の山体を形作っているのです。つまり、山体をよく観察すると、これらの活動の過去の痕跡が残っているのがわかります。その痕跡とは、「地形」と「地質」です。この「地形」と「地質」を綿密に調査することで、溶岩流や火砕流がどの方向にどのように流れるかなどの地形地質学的な「クセ」を把握することができるのです。

物質は高い方から低い方へ流れるのは当たり前ですが、例えば溶岩が流れ下る方向に小高い山があったとします。ほんの小さい山であれば溶岩は乗り越えてしまうかもしれませんが、少し高い山であれば溶岩はそれを避けて流れます。火砕流も同じです。これは地形を見れば予測できることです。また、今回の一連の噴火では、爆発的噴火に伴う「空振」により、窓ガラスが割れるなどの被害が発生していますが、この空振被害をうけた建物の分布は新燃岳から見て地形的にさえぎる山がない地域に集中しているらしいのです。よく考えれば当たり前なのかもしれませんが、被害は地形にかなり影響されることがわかります。一方、溶岩がハワイのキラウェア火山のようにあたかも水が流れるがごとくさらさらと流れるのか、それとも雲仙普賢岳のように溶岩ドームを形成して火砕流を引き起こすのか、はたまた複合的な活動をするのか、これらは地質を見れば明らかとなります。

これらの特徴を地図で見ることができれば、防災上非常に有益です。霧島山は気象庁からランクBの活火山に指定されているため、地形・地質の詳細な調査が行われています。その結果として、国土地理院から「火山基本図」および「火山土地条件図」が、産業技術総合研究所から「火山地質図」が刊行されています。

火山基本図はいわゆる地形図の一種ですが、縮尺が1:10,000であり、等高線の間隔が5mと、精密な地形を把握することができます。また、火山土地条件図は、火山山体とその周辺の地形が、例えば溶岩流とか地すべりだとか、どのような成り立ちで形成されたのかを主に空中写真により解読し、わかりやすく色を付けて表現した地図です。これを見ることによって、新燃岳における今までの山体形成過程における「クセ」を把握することができ、今後も大まかには今までと同じ傾向で現象が発生するとすれば、新燃岳が溶岩を流したり、火砕流を発生させたりしたときに、どのような方向にどういった広がりで流れるのかといった大まかな傾向を把握することができます。火山地質図も火山土地条件図と似ていますが、火山土地条件図が主として「地形」からその成り立ち・形成を見ているのとは対照的に、火山地質図は「地質」という観点から、例えばその場所がどの火山から噴出したどのような溶岩で形成されているか、霧島山でいえば火山群の構成がどのようになっているかなどがわかるようになっています。火山土地条件図、火山地質図ともに地図の裏面などに、これらの地図の使い方や火山の地形的地質的特徴などが詳しく解説してあるので、火山基本図も併せ、これらを複合的に利用すれば、防災マップ作成などの防災対策上、非常に有用です。

なお、1:10,000火山基本図「霧島山」、1:30,000火山土地条件図「霧島山」、1:200,000数値地質図は、全国の地図販売店、地図センターのネット販売などで入手することができます。また、火山基本図から作成した数値地図10mメッシュ火山標高CD-ROMで販売されています。これらに関するお問い合わせは日本地図センターの「地図の店」(TEL 03-3485-8120)までお願いします。

おわりに、今回の噴火で被災された方々に謹んでお見舞いを申し上げます。火山土地条件図(霧島山)

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jmckajika at 13:15 
コラム | 防災

2011年02月04日


  レギュラー登場人物のひとりが地図大好きな刑事、という設定の最近はじまったテレビドラマがあります。彼女は「地図力博士」も取得しているということなので、(財)日本地図センターが実施してきた地図力検定試験を受け最高レベルの成績を収めたのでしょう。
  地図力検定試験は、地図の知識を豊かにし、地図を楽しく読み・使う力を養うことを目的とし、2004(平成16)年10月に第一回から概ね年に2回程度のペースで実施してきました。昨年は6月に第13回試験、そして11月には第14回試験を行いましたが、この回から名称が微妙に変わっていることに気づかれた読者も多いのではないでしょうか。
  これまで地図力検定試験は(財)日本地図センターが主催していましたが、第14回試験から(財)国土地理協会に加わっていただき、両法人の共催で実施することになり、名称も「地図地理検定」と改めました。主催者や名称変更を機会に、試験問題に地図だけでなく地理や地名に関する事項を増やしました。また、試験問題が難しすぎるという指摘も多かったので、地図や地名についての一般的な知識を問う「地図地理検定(一般)」と、実務経験者、専攻・研究・指導者、あるいは趣味として深く関わっている方々向けの「地図地理検定(専門)」の2段階に分けました。
  情報技術と測位技術の発達と融合によって、これまで地図表現とは馴染みのなかった情報も含め、位置に関わるデータを併せ持つことによって、世の中に在るあらゆる情報を地図のように扱うことが可能となってきました。
  このように情報機器で扱う情報はコンピュータが扱いやすい仕様にして、人間には分析結果だけを文字や音声で知らせればよいと言うひともいます。しかし、最近の携帯端末を使った情報検索では、地図を媒介とする検索が7割以上を占めているというデータもあります。ひとが端末の小さな画面に表示された地図を目で見て操作するのですから、記号を含めた地図表現の工夫は不可欠あり、その基になる紙などに印刷された地図の重要性はますます高まっています。
  地図地理検定は誰でも受験できます。受験資格は問いません。この検定により、地図・地理に関する知識・レベルが判定できますから、個人だけでなく教育活動にも活用できます。(一般)試験で高得点のひとは「合格」を、(専門試験)で高得点のひとは高い順から「地図地理力1〜3級」を、最高クラスの特典のひとは「地図力博士」改め「地図地理力博士」を認定します。詳しくは当センターのWebサイトをご覧下さい。3月下旬までには申し込み用紙付のリーフレットの配布も開始します。

  04 受験風景2

写真:立正大学熊谷キャンパスでの受験風景.立正大学の地理学教室では、初年次学生を対象とした必修科目に地図地理検定を導入し、受験していただきました。

 



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